やくろぐ│人の薬に立ちたいブログ

人の薬にたちたいブログ。気軽に話しかけてね!Twitter→@sansigoi

【恋愛小説】ココの過去~猫耳の彼女は突然に~

広告

f:id:chacatechin:20180801234226p:plain

 

ココは思い出していた。甘酸っぱかったあの頃を。いつも突然だった猫耳の彼女のことを・・・

1.猫耳の彼女は突然に

桜ヶ丘大学の文化祭。たくさんの学生の声が響き渡るキャンパスは、またいつもとは違う活気があった。

 「おいココっち。今日すっげー楽しいな!」

僕は友達のトニーに無理やり連れて来られ、体育館にいた。体育館ではいろんな出し物をしており、ステージでは漫才、バンド、ダンスなど、新入生から大学院生まで様々な人たちが思い思いに自分を表現している。

 

無理やり連れてこられたといったが、僕は自分でギターを弾くほどにバンドが好きである。もう少し、屋台の食べ物を食べていたかったのだ。

 

大学の文化祭は高校までのものと違ってバンドのクオリティーが高い。さらに、あまりメジャーではない僕好みの曲まで演奏してくれるので、それだけでとても満足していた。

 

ただ、その日はそれだけでは終わらなかった。あまりの衝撃に彼女が何を弾いていたかは覚えていない。衝撃を受けたのは彼女の演奏にではなく、彼女に、だ。

覚えているのは彼女が猫耳を付けて演奏していたということ。

 

僕はトニーに聞こえるか聞こえないかくらいの声でこうつぶやいた。

「かわいい。」

人生で唯一の一目惚れであった。

 

 

それから数ヵ月。彼女と僕が同じ学部であることが判明し、さらに趣味や音楽のジャンルまでも同じだったことから仲良くなるのはそう難しくなかった。

 

彼女は学内の評判もよく、学部では1位2位を争う人気がある。そんな彼女と仲良くなれた僕は少し優越感に浸っていた。

 

しかし問題は友達のトニーである。僕と彼女が仲良くしているとすぐに割り込んでくる。

「なーに二人でイチャイチャしてんだよ。俺も入れてくれ!」

 

「いいじゃん別に。私がココっちと仲良いことに嫉妬してるんでしょ?」

彼女はいつも冗談っぽくこう答える。冗談とわかっているが、それだけでも僕は喜んだ。

 

3人でいるのはそれはそれで楽しいからいいのだが、トニーもきっと彼女が好きなのだ。

 

3人で旅行にいったりご飯にいったり、青春という言葉にふさわしいほどの日々を送っていたが、次第に危機感を覚えていった。

 

それは、最近トニーと彼女が二人で一緒に帰っている目撃情報がちらほら出てきたからだ。やばい、タイミングを逃すとトニーにとられてしまう。

 

 

12月。僕はクリスマスに彼女をデートに誘うことに成功した。さすがのトニーもクリスマスデートには割り込んでこなかった。

 

断っておくがトニーと仲が悪いわけではない。デートのことを話したら悔しそうな顔をしていたが、空気を読めるいい友達である。

「俺が先に誘えばよかったなぁ。でもココっちの邪魔するわけにはいかねぇし。応援してるよ。」

これが男の友情である。もし仮に立場が逆でも同じことを思っただろう。

「おう。トニーの分まで頑張るよ。そして付き合ってくるぜ。」

 

「このやろ。」

二人の笑い声が教室に響いた。

 

2.猫耳の彼女は突然に

デート当日。僕はデートが決まった日から緻密にプランをたて、告白する流れを頭に詰め込んでいた。

 

僕たちは水族館にいた。街もそうだったが、水族館までもクリスマス一色である。水族館は薄暗く幻想的であり、デートにぴったりな場所だと思った。

 

なまこ体験コーナーでなまこに怯える彼女を茶化すと彼女は膨れた。

「バーカ」

その言葉とは裏腹に彼女は笑顔である。

 

ペンギンの行進の横で同じように行進するポーズを一緒にやった。このときの写真は今でも持っている。

 

まだ付き合ってないにも関わらず、僕たちはカップル同然だった。水族館デートは100点である。

 

帰りにはよくあるちんあなごのマグネットをお揃いで買った。

 

緻密にたてたといってもそのデートコースは水族館からフレンチでディナーという、なんともありきたりなものである。

「乾杯」

グラスとグラスが触れ、おしゃれな音が小さく響く。僕は乾杯したスパークリングワインを一気に飲み干す。酔ったらいけないが、このあと告白するのだ。シラフではこの状況に耐え切れない。

 

僕はディナーの終盤で告白することを決めていた。しかし、メインの肉料理が出てくる前に彼女がこう切り出した。

「ねぇ、ココっちって好きな人いるの。」

青天の霹靂である。彼女はよく僕の心を見透かしているような行動を取る。僕は固まってしまった。

「え、いないよ。」

馬鹿である。男らしく、君だよと言えばいいのに。変な体裁のために嘘をついてしまう。

「そっか」

気まずい時間が流れる。それからの時間は赤ワインを2杯飲んだことだけ覚えている。

 

僕らは沈黙のまま会計を済ませ(もちろん奢りである)、店の外に出た。

「わぁ雪だ!」

彼女が無邪気に手を広げる。店に入ってからすぐに降り出したのか、既に雪が少し積もっている。

「痛っ!」

固められた雪が僕にぶつかる。ホワイトクリスマス。僕はなんて運がいいんだ。先程までの気まずさがウソだったかのように、二人ははしゃいだ。

 

ひとしきりはしゃいだ後、僕らは帰ることにした。帰る頃には少し酔いがさめ、僕は先ほど未遂に終わった告白のタイミングを伺っていた。

「あぁー、今日は楽しかったなぁ。今日はありがとね」

 

「僕も楽しかったよ。ありがとう。」

沈黙が流れる。僕の体が今だと言わんばかりに鼓動を高鳴らせる。

「あのさ・・・」

 

「・・・なに?」

僕は彼女の手をグッと握る。僕らは立ち止まり、一瞬にして体温が上がるのを感じた。

「さっきの嘘。君が好き。」

彼女が僕の手を強く握り返し、微笑む。

「知ってる。」

僕も彼女と同じように微笑んだ。また、心を見透かされていたようだ。

 

3.猫耳の彼女は突然に

それから僕らは付き合った。ほぼ毎日一緒に過ごした。喧嘩をすることもあったが、なんとなくこの人と結婚するんだろうなと僕は思っていた。

 

大学を卒業し、僕らは少し遠距離になった。遠距離といっても隣同士の県なので会おうと思えば会える距離であった。

「少し離れるけど、浮気なんかしちゃダメよ?」

僕はこういうのに弱い。攻められるのと甘えられるのが同時に来ているようで、僕はにやけてしまう。

「気持ちわる」

僕はツンデレにも弱い。僕はこのことずっと一緒にいるんだと心で誓った。

 

しかし、思った以上に心の距離は離れていった。電話はもとよりメールすらも疎遠になっていった。

 

社会人になって3ヶ月程たったころ急にメールが来た。

「別れよ。」

理由もなくである。心の距離が開いていったのは感じていたが、一度結婚を視野に入れただけあって、ショックは大きかった。

 

別れたくはなかったが、特に言い返す言葉もなく、僕はそれを受け入れるしかなかった。

「わかった。」

そう答えた。

 

それから1年後、僕とトニーはちっぽけな居酒屋で飲んでいた。大学の頃から愛用していた居酒屋である。トニーとは大学を出てからもよくご飯を食べる仲だった。

「そういや、ココっちが分かれてからもう1年か~」

 

「トニーはいいよな。可愛い彼女さんがいて」

 

「よく3人でこの居酒屋で飲んだものだ。そういやあいつ何やってんだろうな」

 

「さぁな」

いつものようにたわいもない話をしていた時だった。

「よっ。久しぶりぃ」

1年前と変わらぬテンションで、僕たちが別れたことなんてまるでなかったかのように彼女が現れた。

あまりに急だったので僕は飲んでたビールでむせてしまった。

「っ急にどうしたんだよ。」

 

「いや、こっちに転勤になってね。てへっ。」

彼女は無邪気に舌を出している。あざとさとはこういうものなのか。しかし僕はそれに弱い。

 

話を聞くと彼女は1ヶ月ほど前からこっちに戻ってきたようで、この居酒屋にも何度か訪れていたようだ。

 

それからというもの、僕たちはVHDテープが巻き戻されるかのように昔に戻った。お互いを嫌いになって別れたわけではなかったので、いつの間にかずっと一緒にいた。

「僕たち戻ったんだよね」

 

「そうみたいだね」

彼女はいやらしく笑った。

 

僕は働いた。彼女と結婚するための資金稼ぎである。プロポーズはしていないが、僕は彼女と結婚するつもりでいた。

 

彼女がこの町に戻ってきてからというもの、ほぼ半同棲生活だったし、特にお互いの生活スタイルが合わないわけではなかった。この生活がいつまでも続くと思っていた。

 

しかし、彼女はいつも嵐のように突然である。

 

いつものように仕事から帰ると、彼女の荷物がごっそりなくなっていた。その代わり、机の上に1枚のメモがあった。

「ごめんなさい。別れましょう」

前回は心の距離が開いていくのが分かっていたが、今回は本当にわからない。

 

僕はかなり引きずった。これが小説であれば、病気になったことを僕に隠すためにいなくなったりするのかもしれないが、SNSで彼女がほかの人と元気に写っているのを友達経由で見たのでそれはないだろう。

 

怒りはなかった。それより莫大な虚無感に襲われそうになる。

 

僕は結婚相手を失った隙間を埋めようとした。彼女のために貯めていた結婚資金をプリウスに当てた。

 

 

それから数年、かなりの時間が経った。僕はあの時買ったプリウスを乗り回し、その助手席には最愛の人が乗っている。そして愛する命が最近ひとつ増えた。

 

僕は幸せである。世界一の幸せ者である。これからもずっと、このふたりを守っていきたい。

 

彼女が今どうしているかは知らない。なぜ急にいなくなったのか、もう僕には関係のないことだ。

 

 

ある日、トニーから1通の手紙が届く。写真が添えてあり、トニーの横には見慣れた顔があった。

言ってくれればいいものを。本当につれないやつだな。

 

ただただ、僕は微笑みながらこうつぶやいた。

「このやろ。」

 

猫耳の彼女はいつも突然やってくる。

 

 

このお話はほぼフィクションです。この企画を支えてくれた方々、情報を提供してくれたココさんに感謝します。

↓この企画の詳細はこちら↓

★予告編★【ココ氏100記事記念企画】プリウスの謎 - 1年間育児休業を取得した30代前半男性の日記

↓ココさんのブログはこちら↓

ココブログ-新米パパの子育て奮闘記-